あいつが死んだ夢を見たことがあった。突拍子もない夢なのに感覚だけはやけに現実味があったから、今でも鮮明に覚えている。想像していたほど泣いたわけでもないし悲しいとかいう言葉で表せるものでもなかった。ただ夢の中で何度もあいつのことがよぎっては、ああ、あいつはもういないんだなって思い出す、そんな考えを繰り返すだけだった。

我曾经做梦梦见过那家伙死掉。虽然梦的内容完全莫名其妙,但梦里的感觉格外真实,所以现在也还记得很清楚。我并没有哭成自己之前想象的那样,也没有感到被称为“悲伤”的情绪。只是在梦中一遍又一遍地想起他,然后反应过来“啊,那家伙已经不在了”,仅此而已。

その瞬間はどんなときでもやってきて、あいつと見た猫、っぽい猫が目の前を横切った気がしたとき、蝉の声が意識にのぼったとき、カラスの鳴き声が聞こえたとき、百円玉を見たとき、街灯の灯りを見たとき……。全部があいつの象徴で、だけどハッと気づいたら消えちゃいそうなくらい一瞬だった。どれが消えてもあいつの一部が消えちゃうから、全部どこかに書きとめておかなくちゃダメだって思った。正直僕は夢の中でそんな気持ちになっていることに驚いていた。だってそれまではあいつと過ごした日常なんて有り余るくらいたくさんあったはずなのに、急に惜しくなるなんてちょっとおかしいよね。

我随时都会体验到那种瞬间,像是面前跑过一只长得很像我和他一起看过的猫的猫时、意识到蝉鸣时、听见乌鸦的叫声时、看到一百日元硬币时、看到路灯的灯光时……所有这一切都是那家伙的象征,但这样的瞬间在猛然回过神来的那一刻就几乎要消失了。无论消失的是什么,都代表着那家伙的一部分的消失,所以我觉得必须得在什么地方给它记下来。说实话,我对梦里自己的这种想法非常惊讶。毕竟在那之前我和他度过的日常实在是多得不得了,突然开始珍惜这些多少有点奇怪。

そして目が覚めてしまったら、そこはやっぱりなんでもない退屈な日常だった。生きているあいつと過ごす日常はどうしても大事には思えなかった。あいつに死んでほしいと思ったとか、そういうことでは全然ないんだけど……。 いや、あいつがいなければ楽なのにって思うことは正直たくさんあった。あいつにどう思われるかとか、あいつになんて言ってやろうかとか。つまらないことをずっと考えて生活するのは苦しかった。でも死んだりするのは違うよなって。口に出したら本当になってしまうから、そういうことは考えないようにした。違う学校に行ったりすればすぐに離れ離れになるものだけど、あの時はそれがずっとずっと先のことだとしか考えることができなかった。

醒来以后所面对的果然还是乏善可陈的日常。我再怎么也无法认为和活着的那家伙一起度过的日常是什么宝贵的东西。虽然倒也不是说想让他去死……不,实话说让我觉得“要是没有那家伙就好了”的事情还是挺多的。他会怎么看我,我该跟他说些什么,净想着这些无聊事情的生活也是够难过的。但我也并不是想要他去死。要是说出来了就会变成现实,所以我努力不去想那些事情。虽然只要去了不同的学校就能远离彼此了,但那时候我也只是认为,那是非常非常遥远的将来才会发生的事情。

それにしても目の前で車にぶつかるっていうのはありきたりすぎたかもな。あいつの家族でもないのに火葬場でボタンを押すなんてよく考えたら変だし。っていうか火葬場って本当にボタンを押すのか?あと化石燃料って言うけど、別に本当に恐竜の化石が燃料になってるわけじゃないよね。

话又说回来,在我眼前被车撞死什么的说不定有点太普通了。仔细想来,我又不是他家里人,却在火葬场按按钮也很奇怪吧。是说火葬场真的是按按钮的吗?还有,虽然说是叫化石燃料,但那也并非真的是恐龙化石变的吧。

そもそも僕らはあの夜、本当に街灯の下のベンチで神話を交換したんだっけ?

说到底,我们那天晚上真的在路灯下的长椅上交换过神话吗?

全部が土台からひっくり返ってしまいそうな気分になる。僕らの最初にあんな夜があったようにはまるで思えないくらい、あいつとの日常は退屈だったから。そして、もしあの夜に僕らが話していないんだとしたら、僕らがずっと一緒にいる特別な理由なんてどこにもないよな。やっぱり僕らが一緒にいるのはほんの偶然で最初から理由なんてなかったのかな。

总觉得一切都要从根本上被推翻了。和那家伙一起度过的日常实在过于无聊,简直无法想象我们是从那样的夜晚开始的。而且,要是我们在那个晚上没有说过那些话,那我们也就没有一直在一起的特别的理由了吧。我们会在一起果然只是个偶然,从一开始就没有什么理由吗?

そうだ、あいつに聞けばいいんだ。僕らはあの夜、街灯の下のベンチで不思議な話をしたよね?って。ただ一言そう聞くだけで、僕らが一緒にいる理由が見つかるし、僕らの退屈な日常だって終わりにできる。簡単じゃん。そうしよう。……。

对了,去问他就好了。我们那天晚上是在路灯下的长椅上聊过不可思议的事情吗?这么问一句就行了。这样就能找到我们在一起的理由,也能给我们无聊的日常画上句号。这不是很简单吗。就这么定了。……。

眠れない夜はひと巡りの考えを巡らせたあと、こうしていつも同じ答えを出した。明日こそは本当にあいつに聞くんだって、そう心に決めて目を閉じた。この気持ちが朝になっても消えていませんように……。

在睡不着的夜晚这么想过一通之后,总是会得到同一个答案。明天,明天一定要去问那家伙,下定决心以后闭上眼睛,希望这种心情在早晨到来时仍然存在……

そして朝になったらいつも、そんな気持ちはすっかり消えてしまう。僕らを支配していたのはつまらない慣性だったんだけれど、それを破るのは宇宙に行くのと同じくらい難しいんだな。

然后到了早上,这种心情则总是消失得无影无踪。虽然支配着我们的不过是无聊的惯性,但要打破它真是和到宇宙去一样难。

季節が次々と移り変わっていくように、新しい象徴体系は僕らのすぐ目の前まで迫って来ていた。

就像是季节次第更迭一样,新的象征体系逐渐逼近到了我们的眼前。